砂漠
2012年 01月 01日
フィクションとしてはとても地味だけどノンフィクションなら
少々突飛なできごとがおこりすぎな大学ライフや
平凡なゆるーい大学ライフに奇妙な事件がからみ
暗い影の匂いがするとこなんかも絶妙に緊張感を持たせることに成功しとります。
文体はあいかわらず春樹っぽい。主人公=語り手(北村)が鳥瞰型だし(やれやれ系)
ただ本作は作者特有のギミックがあまり生かされてないので残念
この人の小説は基本的に日常→非日常に見せかけて
超常的なことは何もおこらない、そのかわりそこにうっすら
忍び込んでくる奇妙な事件や違和感を最後まで引っ張り
オチ近くになると用意される何がしかの「仕掛け」におお!と
唸らされることが多く、そしてお話的にもちょっといい美談が混じったり
やけに濃いキャラクターが登場したり。
でも本作は決定的な超常現象が一つ起こってるんですよね。。
本作と比較すると類似点が多い分、そういう点
「アヒル」の方がインパクトは強い、でもこちらはあくまで普通の大学生の
青春群像劇として見たほうが正解なんでしょうね。
こんなにドラマティック(平凡な設定に見えるけど、現実と比較すれば十分
ドラマチックな大学ライフになってると思いますw)ではないけど
自分の大学ライフと照らし合わせて被ってる点がやはりいくつもあり
砂漠=社会を前にしたモラトリアムをゆったりしたリズムで描いております。
しかしこの話の人らに比べると自分の大学時代なんかなんも考えてなかったわなぁ。。
そして本作をより魅力的に見せているのは後書きでも触れられていますが
西嶋の存在。典型的な「ウザオタク」タイプの西嶋だけど
不思議と不可能を可能にしてしまう説得力がある、現実のオタクも
行動力を伴えばきっと西嶋に変身してしまうのですが、現実では
服屋のマネキンにかかった服一式を「なんとなくいいから」という理由だけで
買い占めてしまう行動に出る猛者はなかなかいない
あそこまでの奇妙な行動力が伴わないと「ニセ西嶋」になってしまうんですね。。
そういう、日常にいそうなキャラを魅力的に描写してしまうとこも
ある意味「伊坂マジック」なのかもしれませぬ。
by kgapk2004
| 2012-01-01 21:41
| ブックレビュー