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06年11月HPリニューアルに伴い、ブログタイトルもリニューアル。


by kgapk2004
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ソラニン

ソラニン_c0005235_223451.jpg
スピリッツで「おやすみプンプン」連載中の浅野いにおの出世作(?)。
EDENの項で触れたロッキンオン的メンタリティをまさに地でいってる作品。
最近そのへんで評判を聞く作品ですが、モラトリアムで悶々とした青年を
主人公にした作品はたとえば邦画なんかでは頻繁にテーマに持ってきています。
なので、そのテーマ自体はそんなに珍しくないのですが
時代の空気を貪欲に取り込んで、それを2冊というコンパクトな長さにまとめた秀作。
80年代ならホットロードや尾崎豊、90年代ならリバース・エッジにさくらの唄
初期スーパーカーの詞世界なんかが表現していた、時代の空気感であるとか、何もない日常とか
現実と夢の葛藤とか恋愛と結婚の境界線とか芸術と商業主義の折り合いの付け方とか
もう、そんな答えのでない悶々としたテーマをあれこれともってきた作品(笑)
いまの時代(00年代)の空気を敏感に反映しているという意味で上記の各々の時代に対する
作品、バンドの詞世界と共通の背景を持ってる作品と言いましょうか。
そういえば、去年みたインディーズ邦画「東京失格」もまったく同じような内容だったなぁ。。

人によっては思い当たる節、共感するとこがたくさん出てくるリアルでいたーいマンガです。
でも早々社会に出た人なんかは何それ?と思われる作品かもしれません。
シチュエーションはあくまで芸術指向の大学生がターゲットなんですね、コレ。
ただ、いまの時代の青年層なら多かれ少なかれ共通している「気分」のようなものは
うまく形にできてると思います。モラトリアムな時期をすぎた人からすると青臭い部分も目について
しまうため、その独特の匂いが過剰に鼻につくためかそのへんで浅野いにおって
思いのほか好き嫌いの分かれる作家になっているみたいです。
でも、こういう悩みや葛藤は動物的に環境に疑問を抱かず適応して生きていくのでなければ
ついて回る課題です。
自分なんかはなまじ近い考えがあるばかりに、ちょっと近親憎悪的な感じをもったりもw。
まぁ、まずこうやって明確にバンドをやる仲間がいるだけで
充分恵まれてるんじゃないか、とも思うんですよね。さらに、音源を作ってレコード会社に
売り込む、というとこまでいくと普通はその段階にすら
達せず、夢や野望を引きずったまま世に出ていく人が圧倒的に多数な訳で。
確かにそこまでしてダメだったら諦めはつくんだけどね。。

このソラニンで提示されてる悶々とした若者たちの行き場にどれだけ回答を示すかが
いまの日本の最重要の課題だとも思います。90年代半ばのリバース・エッジと基本的な
閉塞感や空疎感は何も変わってないというのが問題な訳で(あれ94年の作品なのに。。)
ソラニンではその後、ほどほどの自己実現と社会との折り合いをつける、という形で幕になりますが
これは現在の世の中での一番理想的なモラトリアムへの決着の形、ですよね。
しかし、趣味や野望(?)や芸術主義を単なる1趣味ではなく、賃金と手ごたえのともなった
副業レベルのものまで「大衆レベル」でもってこれるかが今後の課題というか
作り手・やり手のモチベーションの維持に繋がり、ひいては国の文化や技術の隠し玉ともなる
刺激的なもの新しい発想がでてくる源泉になるんじゃないかと思うんですがどうなんでしょ。
少子化やオートメーションが進めばいずれは、本業の実質拘束時間が短縮され
いずれそういう流れになっていくと思うんですが。最もそれは何十年かも先の話になるでしょうね。。。
by kgapk2004 | 2009-08-09 22:03 | コミックレビュー