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06年11月HPリニューアルに伴い、ブログタイトルもリニューアル。


by kgapk2004
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警官の血

警官の血_c0005235_22575670.jpg
親子3代の物語ってゆーと世代的にドラクエ5を思い出してしまいますw
生粋の警察小説としては高村薫の「マークスの山」
以来かもしれません。特定の職業、特に
公的組織として扱いがメジャーで描写がしやすい警察をリアルに描くのはいいのですが
やはりエンターテイメント性なり心理描写やギミックに見所がないと
せっかくリアルな警察内部の描写があっても
そこに特別興味をもたない身としては、ただただ退屈になってしまうだけ
これ、戦争映画の組織描写にも通じる部分じゃーないかと思います。
(基本ドキュメンタリータッチなり心理描写なりサスペンスタッチな市街地線の
緊迫感なりがないと過剰な軍隊フューチャーでは退屈してしまうたちです。。)
まぁ結局興味がなくとも組織を組織として魅力的に
警察ものなら(シンプルに言えば)かっこよさげに描けていればいいんですが。
警官の血は直木賞をとったため、「警察」の題名にそこまで特別な思い入れを
持たない読者も多く手に撮るはずで(自分がそれw)
しかし佐々木譲という警察小説を既に幾つか書いている作者の
各方面で絶賛され代表作扱いとなっている話題作だけに
どんな仕上がりになっているかと期待も込めて読み始めました。

結果的には警察という組織について、少しだけ詳しくなったし
後半に行くほど伏線の解明も徐々に進み、物語の没入度も高まっていくのですが
全体的に淡々とし、その結末も意外にあっさり、また結末までに特に意味をもたない
その場限りの設定や人物が意外に多いのが気になってしまいました。
巻末にもありますが登場人物の心理をあえて掘り上げてかいておらず
(あるにはあるけど、それがかなりあっさりめ)
いまいちそれぞれのキャラクターが把握できなかったりします。
最終章ではもう2,3段大きなどんでん返しが欲しかったトコロ。
しかし、3人の主役交代と時代の変化を受けて変化する組織
それぞれが生きた時代の世相の反映が程良く盛り込まれた点は、非常に優れた作品。
その場(世代)限りの人物やエピソードも全て、その世代限りで関わった1市民たちであり
些細な事件も警察官としての各々の立ち位置を示すためには欠かせないものが多く
作者が最初意図したように、保安官のような立ち位置としての
地に足のついた駐在の姿を描きたかったというのがよく伝わってきます。
以上、お話の筋書きにはそこまでのめりこめなかったものの
警察官としてのありように内部の軋轢、時代の変化へのシミュレートは非常に丹念に
描き込まれており、むしろそっちがこの小説のメインかなぁと思いました。
by kgapk2004 | 2010-06-13 22:58 | ブックレビュー