黒揚羽の夏
2012年 05月 04日
でもこのレーベル、似たシチュエーションの作品の宝庫で(ジュブナイル専用みたいなとこだし。。)
どうせなら筋書きや評判が一番ピーンときたやつを
絞ってみようと探したところいきついたのが第1回ピュアフル小説対象を受賞した本作でございます。
家庭に事情を持ち一週間だけ祖父のいる田舎町に
預けられた3人の兄弟姉妹が体験するひと夏の冒険
台風が去ったのと入れ替わりで起こる30年周期で繰り返される少女の失踪事件
死んだ少女の手記と発見された気味の悪いフィルム
夢に現れる少女の幻などなど、怪奇幻想ちっくな味付けに絡めて
親子の問題、民族問題、自立の問題、田舎の閉鎖性、友情、同性愛(ジュブナイルでやっていいのか?)
まで入っていて、いろいろ詰め込みすぎて
全てが綺麗に収束したとはいえないギリギリのところで物語はすぱっと幕をひいてしまった感じ。
事件そのものは(やや展開の読める点も含め)綺麗な締めになっていますが
提示されたまま宙ぶらりんで終わってしまったテーマもありますね。
ただジュブナイルとして(コレから出て行く世の中のいろんな複雑な事象を考えるきっかけ)は
十分な描写に徹しているともいえるんじゃないでしょうか
(一つ一つをつっこみだしたらそれだけで1冊小説ができあがってしまうような内容かもしんないし)
ジュブナイル+怪奇幻想小説としてはお約束をほぼ過不足なく取り込んだ秀作
ミステリー的な味付けが特にうまいためラストまで興味を持たせたまま
読み進めることができます。それでいて作者独特の癖のある文体も
垣間見られ、盆百のジュブナイルから頭一つは抜き出ているのも確か
少女の手記→フィルムが出てきて上映される描写までのくだりが
個人的に一番のクライマックス。このシーン、解説ではシュル・レアリスムの
流れも含めてエル・トポあたりと比較されてるけど、真っ先に思い出したのは
「リング」のビデオシーンでした。特に小説版の方。
不気味な映像の描写はやはり半分想像力に委ねられる点
小説と愛称がいいんだなぁと改めて思わせる名シーンでした。
by kgapk2004
| 2012-05-04 10:50
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